脳はどのように脳内の異常を感知し、老廃物を洗い流しているのでしょうか
ヒトの脳内においては、免疫細胞は脳実質に直接侵入することなく、硬膜において脳の病気や異常を
監視しています。
グリンファティック系は、脳脊髄液を介して脳の老廃物を除去するシステムです。脳の廃棄物を脳脊髄
液とともに除去するシステムであり,神経変性疾患に関連するアミロイドβやαシヌクレインなどの異
常蛋白もこの系で除去されます。
- 脳脊髄液の流れ:動脈に沿って脳脊髄液が流れ、グリンファティック流となって脳実質を通過し、老廃物を運び出します。
- 動脈の脈動とアストロサイト:この流れは動脈の脈動やアストロサイトの水チャネル(AQP4)によって促進されます。
- 睡眠中の増強:特に睡眠中、ニューロン活動の減少や深睡眠中の同期した神経活動により、脳脊髄液の流れが促進され、老廃物除去が効率化されます。
リンパ管のネットワークは硬膜に収められており、脳の免疫監視と老廃物の除去に重要な役割を果たします。
- クモ膜顆粒における免疫監視:クモ膜の小さな突起(クモ膜顆粒)には免疫細胞が集まっており、脳脊髄液から抗原をサンプリングし、監視を行います。抗原提示細胞は、脳脊髄液中の抗原を取り込み、巡回するT細胞に提示します。
- ACEポイントにおける脳実質と硬膜の連絡:脳からの静脈血は橋渡し静脈を通って硬膜洞に送られ、ACEポイントと呼ばれる構造で硬膜と脳実質が連絡します。ここで老廃物の除去が行われます。
これらのシステムを活用して、以下のような治療戦略が考えられます。
- グリンファティック系の促進:AQP4チャネルの機能を強化する薬剤や動脈の脈動を増強する薬剤、ニューロン活動の同期を促進する技術の開発が考えられます。
- 免疫監視の強化:硬膜内の免疫細胞をターゲットとし、早期検出と除去を促進する戦略が考えられます。具体的には、抗原提示細胞の機能を強化する免疫調整薬や、ACEポイントを介した免疫細胞の移動を調節する治療法の開発が考えられます。
これらのシステムと治療戦略は、神経変性疾患や感染・免疫性疾患の治療において、今後ますます重
要となることが期待されています。